業界紙「月間手技療法」に掲載されました。

月間手技療法

バランス活性療法で得た整体観                 

整体きむらさんち 院長 木村和男

バランス活性療法に出会うまで

 21歳の時に会社のバレーボールクラブでの練習中に、突然ひどいぎっくり腰になり、まったく動けなくなりました。1週間くらい整形外科に通院しましたが、痛み止めと湿布薬、あとは安静にという指示。病院の治療はそんなものでした。何とか動けるまでにはなったので、腰が曲がったような状態で会社へ行ったら、見かねた会社の同僚が「整体」というものを紹介してくれたのです。
 その整体へ通っていたら、腰も伸びてきてあまり気にしないで過ごせるくらいになったので、その時から「整体」というものに興味を持ちました。
 自分は完全に治したかったのですが、その先生は「痛かったら来なさい」という感じでした。
 しばらく通っているうちに、自分で痛くなるタイミングというのか、感覚が分ってきたので自分で通院の間隔を決めて通っていました。そのうちにその整体院も流行ってきてすぐには予約が取れないような状況になってきたので、定期的に予約をして通っていましたが、突然先生が亡くなってしまったのです。
 私は会社員として勤めながらも、何かを自分でやりたいとは常々思っていました。
 そんな時に新聞広告で整体教室を見つけたのですが、授業が平日の夜だったのです。その頃の会社は残業が多くとても通えません。ところが、通えないとなるとますます行きたくなって、今度は通えるところを探したら、一般的な個人の整体院で教えてくれるところを見つけました。
 1年くらい通ったときに、腰が痛かったので「今日の研修は参加できない」と連絡を入れたら、「モデルになってほしい」といわれて、「これは治してもらえるチャンス!」と思って行ったのですが、先生に「俺、腰痛は不得意なんだよね」と言われてガッカリ!
 今考えるとそこは『癒し系』の整体院でした。

 そこで、今度は一般的な整体院では治せないのなら「治せる整体」を探そうと、いろいろなところから資料を取り寄せました。
 その中に「赤ひげ塾」の資料もありました。読んでみたところ、内容がよく理解できず何となく嘘っぽくて、塾長の剣持甲子朗という名前も時代劇スターのようで怪しいと思ったのですが、ネットで調べてみると本が出ているとわかったのでさっそく買って読んでみました。施術料の設定など自分の考えとピッタリだったし、何か感じるものがあったので「ここで勉強してみようか」と思い電話をしました。留守番電話だったので「ああ、縁がないのかな~」と思っていたら、その夜に塾長から電話が来たのです。自分の想いを伝え、受話器を置いた時には99%受講を決めていました。そして最終決断のために見学に行ってその場で平成15年1月からのコースに申し込みました。

 驚いたのは、研修の初日の午前中は腰が痛くて座ることも辛かったのですが、午後の相互練習が終わったときには痛みが消えて正座が出来たことです。「これは治せる整体だ!」と確信が持てました。

開業

 研修中も母親や周りの人たちを練習台にしていましたが、その時は何も変化を感じなかったのが次の日には楽になっているということもたくさん経験しました。これはそれまでに習った整体とは最も違うところでした。
 また、股関節を傷めたおばさんが会社にいてびっこをひいていたので、聞いてみると「茨城県のみならず他県まで治療に行ったりしていたがどこへ行ってもダメで諦めている」と。
 そのころ研修の4回目でバランスチェックも習い、応用のⅠまで終わっていたので「私はこういう整体を勉強しているんだけどやらせてもらえないだろうか」と声をかけました。

 「治るとは思わないけど、私のことを気にかけてくれたのが嬉しいからまかせるよ!」と言ってくれたので、早速、自宅へ行って週に1回施術をしましたが、悪い股関節への施術は、バランスチェックすると「やってはダメ!」とでます。できるのは基本療法のみ。1か月間基本療法を続けたら股関節への手技が可能になったので2回くらい施術をしたところ、普通の正座ができるようになり、歩く姿もほとんどわからないくらいに改善しました。これには、本人も驚きましたが私もびっくり! バランスチェックのとおり1か月の基本療法のみで、身体の歪みが改善されたからこその結果に、焦らなくても良いことを学びました。
 また、ちょうどその頃、父が勤めていた会社の社長の奥さんが膝痛で色々なところへ行って治療を受けていて、鍼灸院でも、もう鍼を刺すところがないくらい皮膚も硬くなっているような状態でした。父からの紹介で来られて私が施術したら2回ですっかり良くなって旅行にも行ってこられたし、それまで見学しているしかなかったゲートボールもできるようになり、しまいには選手にまでなったのをみて、「整体なんて仕事にならないよ、女房子供がいるんだからよく考えな!」と言っていた父も、理解を示してくれるようになりました。

 6月に研修が終わったのですが、研修中から練習がてらボランティアで知り合いの方々を施術していました。タダではかえって来づらくなるといわれて1コインの500円いただくことにしていました。しかし、中には「こんなに楽にしてもらったのだから…良くなっているんだから」といって、数千円置いていく人もいたりして、自分なりに手ごたえは感じていました。ちょうどその頃、会社で「ISO規格導入」の事務局長就任の打診がありました。そこに入るとものすごく忙しくなることは目に見えていましたし、自分の納得した整体に出会えたことから、「会社を辞めて開業しようと思うんだけど…」と妻に相談しました。
 反対されると思ったら「人間、歩いていて自動車にはねられることもあるのだから、自分のやりたいことをやったら?」といわれたのです。
 そしたら、そばにいた当時幼稚園の娘が「やってみなけりゃわからない!」と突然言い出し、これにはびっくりするやらうれしいやら。
 そこで8月に会社を辞めて、翌年平成16年3月に自宅の1室で正式に開業となりました。

 さて、いよいよ開業しましたが、「自分が思ったようには必ずしも治らないものだな~」と感じました。
 「はい、起きてください」、「いかがですか?」
 施術終了後に患者さんにこんな言葉をかけて施術効果を確認していますが、自分でもビックリするような難しい感じの症状が劇的な改善がみられる場合と、それほど難しそうでもないのに、改善が悪い場合があります。
 全てではありませんが、患者さん側に問題があるという視点で傾向を見ていると、気難しくて、うるさそうな、懐疑的であったりするマイナス思考の傾向がある方の改善が悪いような気がしていました。逆に、何となく気が合いそうな素直な感じの方の場合は改善が良いような感じでした。
 ある意味、相性のようなものがあるのかな?などとも思っていました。でも、これを理由にしてしまうと、相性が良くない方は改善できないということになってしまいます。
 そこで、自分の想いがどんな時に改善が良くて、どんな時に改善が悪いかに見方を変えてみると…
 改善が悪いときは、相手が気難しい様な、うるさそうな感じがするだけに、「治さなければいけない!」、「痛みを取らなければいけない!」という想いになっていたようです。
 逆に、ビックリするような改善をした時は、素直に相手の方に喜んでもらいたい気持ちが強くなり「楽になってくれたら嬉しいな!」、「痛みが取れてビックリされたら楽しいな!」という想いでやっていたようです。  
 つまり、結果を楽しみに、ワクワクしながら施術した場合には改善具合が良いということになるのかと思います。
 施術者の想いが結果に結びつくのではないでしょうか。

患者さんへの想い

 私の場合は、初回から自覚できる改善効果を感じていただいて、3~5回目位で結果が出て、あとはメンテナンスで1か月後というパターンが圧倒的に多く、そこから外れると…焦ってしまっていました。しかし、最近は、患者さんの都合、施術者の都合とは別の「身体の都合」が有り、これを謙虚に受け止めないと結果的に改善しにくくなるということを感じていて、無理して急いで治そうという気はあまりありません。「治そう」モードではなく気楽に施術するようにしています。
 良くなっても、ずーっと来てくれている方が沢山いますが、施術を受けるというよりは話をしに来る感じです。基本療法であとは世間話。中にはどうしても改善の遅い・悪い人もいます。でも、出来るだけのことは精一杯やってあげよう! あとは本人の自己治癒力の問題だと、開き直ってやっていけば、少しずつでも変化はしてきます。患者さん自身も「出来る事が増えてきた」と感じてくれているので、焦らずバランスチェック通りにやるしかありません。要は、割り切ることです。

 私が研修生によく言うことは、患者さんを目の前にした瞬間から「この人は世界で一番大切な人だ」と思えと。また、施術にあたっては「この人が一番良い状態になるように」心を込めなさいということです。それが思えず、できないのだったら「施術依頼をうけるな」と。
 それは、お金をもらう以上プロだから当然のことです。私は「患者さん」とは思っていません、「大切なお客さん」と思っています。イメージとしては「友達づくり」、患者と施術者ではなく友人になりたい。大切な友人がつらいと自分もつらい。友人が来て病んでいたら早く健康な友人になってもらいたいのであって、患者さんではなくあくまでも大切な人への手助けをするというスタンスです。つまり、「治そう」ではなく、良い付き合いをしていきたいという想いです。理想は「元気な友達」が集う整体院でしょうか。

講師に

 開業後、しばらくして患者さんが自分も整体を習いたいと言ってきたのですが、自分は講師ではないので他の講師に紹介しました。その講師に「講師になるとお金が入るというより、自分自身が変わるよ」と言われ、組織に縛られるのは嫌だったのですが、赤ひげ塾は変な縛りもなくある程度自由だったので、「自分自身が変身」して、他の講師とお近づきになったり横のつながりを持ちたいとの思いから講師研修に入りました。この時も妻は賛成してくれたので感謝しています。
 講師になってからは、多くの講師と交流をもって勉強会などにも参加しましたが、ある時などは患者さんを何人もつれてきて、みんなで施術するということもあり、大いに勉強になりました。
 

基本の大切さ

 私は基本療法の大切さを研修生に説いています。
 基本療法は魚を捕まえる投網と思え。網の目を細かくすれば小さな魚も捕れるが、基本療法をおろそかにするということは網の目が粗いということで、魚も逃げる。逃げた魚を捕ろうと他の網を持って右往左往するよりも、網の目を細かくする方が合理的。だから基本療法という道具を常に手入れして、使いこなしましょうと教えています。
 それでも洩れた魚はバランスチェックで確認して追えばいいのです。以前、基本療法だけではどうせ治らないからと、いろいろな療法を取り入れる事に熱心な方がいました。私はそれを聞いて、「基本療法を追及して深めて行くことで治せるはずだ」という想いで、「どうやって基本療法に持ち込むか?」というイメージで施術をしています。 
 最初は目新しい手法に惹かれる人が多いようです。目新しい事を習うと自分が上手になった様に錯覚する。そして、チョットやってみてダメだとまた新しいものを追う。その繰り返しで自分を見失っている人も多いのでは?メーテルリンクの「青い鳥」と同じで、成功の青い鳥は「基本療法」にあります。
 基本療法ではみ出ることがあったならば枠を広げれば収まるのに、自分で無理だと枠を決めているから広がらないのです。私もいろいろ試してみることもありますが、結局基本療法に戻っています。
 私の研修生で、「起立性調節障害」の女の子を治した女性がいますが、この方は徹底して基本療法だけです。「だって、これだけで治るのですから!」と。
 自分で限界を決めてカベを作らないように、これからも基本の大切さを追及していきます。